お点前

はじめにお点前第一ステージ(亭主入室〜)お点前第二ステージ(茶碗のお清め)お点前第三ステージ(お茶を点てる)




はじめに、ちょっと堅いお話になりますが茶の湯と陰陽五行説の関連を記します

茶室は中国の
陰陽五行説により厳格な曲尺割(かねわり)で成り立っています
畳・道具などを分割し、陰陽に分けて五分割し、五陽六陰十一の曲尺を想定して
その線上に道具類を配置し、点前中の移動もこれによってなされます
点前座は、自然を構成する天地(陰陽)の二気と五行とで、
均衡の保たれた大宇宙であり、亭主は宇宙に座して点前をすることになります

棚の上板は天を、下板は地を、棗は木、炉の火、灰の土、釜や五徳の金、水指の水、というように
道具類にも巧みに陰陽説が取り入れられています

茶室は暦張りにしてあり、一年間の予想される自然現象などを記入してあります
床の間は北側に、客人は南面(陽)にI座し、亭主は北面(陰)にして点前をします
明かりは東南にとります




客を茶室に招き入れ挨拶
 今日の日を一緒に過せることへの感謝と一緒にこの席を創り上げることのお願いをこめたご挨拶です
お点前:第一ステージ
亭主がお点前の道具を持ち入室します

客は亭主の薄茶点前を見ることにより 次第に清浄無垢な精神状態になります
釜の湯に松籟(しょうらい)(釜の湯が沸き立つ音や湯気などから松に吹く風やその音を連想します)を聴き、
柄杓より注がれる水音に山野の小川のせせらぎを聴き、やがて馥郁(ふくいく)とした緑の香華を味わう至福の時を迎えます
亭主のお点前をたんに眺めるということではなく五感を鋭敏にし”感じて"下さい
茶室の外の喧騒から隔絶された純粋な茶の湯の世界にお入り下さい

@亭主の入室
Aお道具類の配置(三光の置きつけ


B北斗の形C亭主挨拶
















D袱紗の捌き(さばき)


















E棗













F茶杓(ちゃしゃく)



















G棗と茶筅の配置








上写真の説明
@亭主の入室の際に、挨拶をします。お客さまは全員でお辞儀をします(総礼)
A水指し前に茶器と茶入れ三光の置きあわせにします
これから亭主とともに至福の一時を創りましょう



B北斗の形に柄杓を構え、合(ごう)を鏡に見立て精神統一に入ります
 茶室内の気を静めてこれからの行いを祈ります
C亭主挨拶 総礼(お客さま全員が亭主とお辞儀を交わします)
 この時には、蓋置きに柄杓が置かれています
D袱紗捌き 棗や茶杓を拭き清めます
 この所作によりましてお客さまとも次第に清浄無垢の世界に誘われます





お点前:第二ステージ
抹茶を茶碗に入れるまでの準備です




@釜の蓋を取ります


A柄杓の湯を茶碗に注ぎます
B茶せん通し

















@袱紗を用いて釜の蓋を取りまして蓋置きに置きます
A柄杓の湯を茶碗に注ぎます
 釜に松籟の音を聴き柄杓の湯に山野のせせらぎを聴きます(穏やかな精神状態)
B茶筅通し 竹の穂先が折れぬよう穂先を1/4づつ回転させて良く湯になじませます
 亭主は次第に無心の境地になり精神統一がなされ始めます

 なかなか無心になることは難しいですが、ご自分の精神状況が良くわかりご自分が見えてきます
 伝統に培われた型を繰り返し学ぶことで、やがて型を抜け出し独自の個性を伸ばし
 今まで気づかなかった自分を発見し、新しい自分の創造の極みに達する事ができるようになります




お点前:第三ステージ
抹茶を入れてからお客様にお出しするまで


@棗(なつめ)から抹茶を入れます


A茶筅と棗(なつめ)の置き合わせ
Bお湯を入れます





C茶筅で点てます




D薄茶の完成です


E半東さんが受け取ります
F後片付け









Gお点前終了のご挨拶
H茶会終了のご挨拶




亭主の心づくしの一服の茶が振舞われます

抽象から具象へ     
何年点前をしていても難しいものです。
お客様からお茶碗のお尋ねなどがある場合もあります
 "一楽二萩三唐津" などと言われますが、使用する茶碗は亭主の心尽くしのものでよいと思います

茶室におきましては作為があってはなりません
非凡なもののみにしか非凡を感じないほど平凡に陥ってもなりません  
何気ない自然のもののなかから見つけ出した素朴なもの
心のあるものを振舞えばよいと思います


A茶筅と棗の置き合わせ


茶入れと茶筅は畳五目ほど離します
水指しと茶入れの間隔は、茶筅と炉縁の間隔と同じくします
また、茶筅と茶入れは、水指しと炉縁角を結んだ直線上に置きます

G後片付け
お客様もお疲れでしょうから、出来るだけ手際良くあとかたつけを始めます
棗 茶杓の拝見の所望があればその用意をします
あらためて、道具を清め拝見に出します
"本日の道具はいかがなものか卜(うらな)って見てください"というお気持ちです

H挨拶にでます
お客様からお尋ねがあればお答えします
主客はお互いの人格の触れ合いに礼を尽くします
お客様が席を立たれて後、"名残のお見送り"をします
亭主は静かに本日の茶会の感慨を味わいます


このように、茶会は主客があいまって創り上げてゆくものなのです。

平安時代に生まれた詩歌、中世の誇る能楽、香道を下地として育まれたお茶は 
桃山時代、千利休が侘びの精神を根本に道を極め、
日本の代表的伝統文化となり、花、書、絵画、焼き物、工芸、建築、文学、栄養学、経済学、哲学、とすべてのものを
網羅するオーーケストラのような総合芸術ともいえます

お茶は特別の事ではなく、日常茶飯事の事なのです
「起きて半畳寝て一畳
 雨は漏らぬほど食は飢えぬほど」
お茶はそのような精神で、ただ湯を沸かし飲むことなのです。

私達は今、高度な情報社会、よりグローバル化した複雑な社会、経済不況、失業など
やり場の無い憤りにさいなまれています
青少年の非行、凶悪な犯罪、家族の崩壊など、ストレスは増大するばかりの毎日です。

その様な時なればこそ、しばしあゆみを止め一服のお茶を楽しむべきではないかと考えます
お茶をすることにより無心になり、真・善・美とは何かを考え
次なる新しい未来を創造するための啓示を受け、人生観や死生観を考える契機となることとおもわれます。



お点前資料編

陰陽五行説は

中国の戦国時代、古代哲学として流行し道家 老荘思想化は天を重視し
儒家は人に重点を置いた五行説を唱えたました
これを統合したのが陰陽家です
日本にも日本書記、推古天皇の時代につたわり聖徳太子も影響をうけたとされます
これは平成10年出土した木簡から裏付けられました
暦の普及につれて民間の生活の中に根をおろし、今日なお俗信、迷信しとていき続けています

はかり知れない宇宙の大きな軌道のなかの小さい地球上のその点である人間の生活を
陰陽五行説でとらえた中国の思想は、茶の湯の稽古の中に、暮らしの知恵として、 
鎮魂の場として取り入れられています
茶はいながらにして天地四方八方、四季などの万物の摂理を肌で感じとる妙境をうることでもあります

北斗の星座の象の柄杓を使いこなし、陰陽和合の茶の湯を行います
棗や茶杓の拝見も"問う"という形で拝見に出されます
本日の道具はいかがなものか卜(うらな)ってみませんか。

五行とは、木・火・土・金・水・木は、
やがて火となり、火はやがて土となり、土は時をへて金となり、金はやがて水となる


曲尺割(かねわり)
千利休の門人南坊宗啓の秘伝書をもとに
立花実山により書かれたとされる
「南方録」の項において
書院台子から草案に至るまで畳の上における道具の配置は
陰陽五行説に基づく曲尺割(かねわり)の法則が基本であるとされている


一楽二萩三唐津
茶人が茶碗の好みを順位づけた言葉。
形、手ざわり、口当たり、重量感、釉景、肌合いなどを総合的に判断して順位づけたものです
これに対して高麗茶碗に関しましては、「一井戸二楽三唐津」という言葉があります



とにかくに服の加減を覚ゆるは濃茶たびたび点てゝよく知れ
千利休


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